更新時の土壌改良について

1、 カルシウム資材の施用量の決定方法
   草地は表面に施肥するために肥料に付随する成分によってカルシウム、マグネシウムが溶脱されるのと雨水に含まれる二酸化炭素によっても表層は酸性化しやすい(図1)。土壌が酸性になるとアルミニウム、鉄などが溶け出して、リン酸と結びつき吸収されにくくなります。また、酸性化することにより土壌微生物の活性が低下し、肥料の肥効が低下すると共に土壌表層の有機物の分解も停滞します。土壌改良の目標pHは6.0~6.5の範囲です。

土壌改良1
土壌改良2

1) カルシウム資材の種類
   カルシウム資材は、炭カル(炭酸カルシウム、CaCO3)、消石灰(Ca(OH)2)、生石灰(CaO)が主な資材です。山から掘り出し粒形を揃えただけ(または粉砕、粉末を造粒)が、炭カルで炭カルを焼いて炭素(C)を飛ばしたのが生石灰、生石灰に水を反応させたのが、消石灰です。すなわち、生石灰を施用しても大半のカルシウムは生石灰→消石灰→炭カルに化学反応して安定化します。安定化した炭カルは、堆肥などの有機物が分解されるときに発生する酸に溶けて植物に吸収されため(図2)、堆厩肥を施用しない草地では炭カルの効果もあまりよくないようです。
石灰分は生石灰が最も高く90%、次いで消石灰65%、炭カルが最も低く55%です。少ない量でpHを早く改善するには、生石灰が適し、維持草地に追肥してもすみやかに吸収されます。しかし、水と反応すると高熱を発生させるので取り扱いに要注意であるのと、更新時に施用するときには施用後に反応が落ち着くまで1週間ほど放置してから播種する必要があります。次いで反応がよいのが消石灰ですが、播種する場合にはこの場合も一定期間あけると安全です。
2)施用量の決定
    正確な施用量を決定するには土壌分析時に緩衝曲線を利用して施用量を算出する方法があります。しかし、簡易的に決定する場合には表1を利用することができます。この表は根釧における火山性土壌を大まかにCECと燐酸吸収係数によって3つに分類していますが、火山性土壌に限らず他の土壌についても応用できます。利用方法は、土壌分析値のCECの値を表右端欄のCECの値と比較し、どの行に当てはまるかを決め、次に土壌分析値のpHの値と同じ値を表のpHの列から探し、行と列の交差した値を読みます。その値が表1では更新時の15cmの深さを、表2は維持段階での5cmをpH6.5に改良する量を示しています。表3はpH6.5に改良した草地を維持するために必要な炭カルの施用量であり、年間10a当たり40kg必要です。

(例)土壌分析値 CEC15、pH6.0の土壌は、更新時には表1から300~325kg、維持段階では表2から100~108kg/10aである。

土壌改良3
土壌改良4
土壌改良5

2、 リン酸資材の施用量の決定方法
  カルシウムの項で記述したが、pHが低いとリン酸は効きにくいため、酸度矯正を優先します。
リン酸は遺伝子を構成する元素であり、活発な細胞分裂を行う器官で重要です。発芽後の幼植物はリン酸吸収力が弱いために根部近くに施用するのがよく、リン酸の成分も水に溶けやすいリン酸と溶けにくいリン酸を50%ずつ施肥するのが望ましい。
  土壌分析値から算出する計算式は図3の通りであるが、分析しない時には成分で15kg/10a程度を施用する。

土壌改良6
土壌改良7