平成21年産道内トウモロコシサイレージの傾向(速報)

標記の内容について1月末までの結果をまとめました。日々の仕事等に役立てて頂ければと思います。21年産トウモロコシサイレージは、分析結果より考察すると下記のようなポイントがありそうです。

○ 水分、ADFが若干高め、粗脂肪が低い傾向にある
○ ADFやOb割合が高く、繊維消化性が低い
○ ミネラルは例年より若干低めである

●成分の傾向

1.トウモロコシサイレージの4ヵ年均値推移                 pH、水分以外は乾物%

pH

水分

CP

ADF

OCW

Ob

NFC

粗脂肪

テ゛ンフ゜ン

カリウム

TDN

総点数

H21

3.88

71.3

8.06

24.1

43.6

38.7

41.8

2.42

25.2

1.03

70.7

348

H20

3.89

71.6

8.34

24.2

44.8

39.0

40.0

2.63

24.7

1.34

70.4

931

H19

3.87

69.3

8.34

22.9

44.3

37.9

40.7

2.79

25.7

1.35

70.6

778

H18

3.88

70.0

8.29

22.8

43.0

37.3

41.8

2.67

26.1

1.32

71.2

585

ここ4ヵ年のトウモロコシサイレージの平均値(表1)を見ると、水分、ADF、NFCは20、21年産が高く、CP、粗脂肪、カリウムでは21年産が低い傾向にあります。しかし、平均値だけではなかなか傾向がつかみきれません。そこで、もう少し詳細に傾向を見てみました。
図1 図2
水分については、20、21年産で70~80%のものが多くなってきているのが分かります(図1)。平均値以上に水分が高いように思うかもしれません。そのため、これまでと乾物割合が異なる場面も出てくるかもしれません。CPについては7~8%が例年より多いことが分かります(図2)。平均値が若干低くなっているはこの影響が考えられます。
図3 図4
繊維については、ADFを見てみると20、21年産では22%以上のものがそれぞれ微増していることが分かります(図3)。一方22%未満のものが減っていることが分かります。しかし、OCWの平均値の傾向とは一致しないのが分かります。このことから、繊維の消化性に目を向け、Ob/OCW%の分布を見てみると、21年産はObの比率が88%以上のものが急激に増加していることが分かり、21年産の繊維消化性が低くなっていることが分かります(図4)。これらの要因としては、21年のトウモロコシ生育期間中の積算温度はここ数年で一番少なく、登熟が進まずに茎葉の割合が高くなり、結果として繊維消化性も低くなったと考えられます。
図5 図6
21年産のNFCについては19、20年産より若干高くなっています。しかし、NFC平均値が同等の18年産のTDNを見て見ると、21年産のTDNは低くなっています(表1)。この差は18年産の繊維含量が低くNFCが高くなったのに対し、21年産ではCPと粗脂肪が低くNFCが高くなっています。更に図4に示したように、21年産の繊維消化性が悪いためTDNで差が出てきています。また、21年産はこれまでになく粗脂肪が低い傾向にあるのでこの点も注意が必要です(図5)。
21年産のミネラルについては、牧草サイレージでも同様の傾向がありましたが、例年に比べると低い傾向にあり、特にカリウム含量が非常に低い傾向にあります(図6)。肥料の高騰により充分な施肥ができない、他の圃場で堆肥などを施用することが増え充分な量が施用できなかった、低温、多雨、日照不足などで養分吸収が円滑に行かなかったなど、様々な要因が考えられます。実際に6、7月の多雨の影響も関連して、カリウム欠乏が見られた地域もあったようです。21年産粗飼料は、例年に比べミネラルが少ない傾向にありますので、バランスだけでなく給与される量についても注意が必要です。
●発酵品質の傾向
21年産の発酵品質ですが、発酵品質の指標となるV-Scoreの分布を見てみると、例年より平均値も高く(表2)、非常に高得点のものが20、21年産と増えてきているのが分かります(図7)。しかし、これで20、21年産の発酵品質が良いと見てしまわぬように注意してください。V-Scoreが元々どういう評価をしているかを考える良い機会です。V-Scoreは劣質発酵した際に出てくる酪酸、酢酸、VBNなどが多いほど減点されていく仕組みです(算出方法等はゆきたねネット内のコンテンツを参照下さい)。しかし、全く発酵していない青草のV-Scoreはどうなるか分かりますでしょうか? これはおおよそ100点の結果が出てきます。V-Scoreの評価にはサイレージ発酵の主体である乳酸含量の評価は含まれておりません。そのため、乳酸主体で前記した酪酸等が少ないサイレージでも高得点となるのですが、有機酸生成量の少ないラップサイレージや充分に発酵していないケースでも高得点になってしまいます。
表2.トウモロコシサイレージの発酵品質4ヵ年平均値推移     現物%

pH

水分

総酸

乳酸

酢酸

酪酸

VBN比

V-Score

総点数

H21

3.88

71.3

1.56

1.16

0.36

0.02

6.24

93.3

323

H20

3.89

71.6

1.89

1.44

0.42

0.02

7.13

92.0

870

H19

3.87

69.3

2.36

1.82

0.48

0.03

7.12

90.1

707

H18

3.88

70.0

2.51

1.95

0.50

0.03

6.61

90.2

492

図7 図8
図9 図10
21年産の総酸や乳酸の含量を見てみると、20、21年産と低下してきているのが良く分かります(表2、図8)。酢酸含量も同様に低下しているのが分かりますが、総酸に対する酢酸の割合を見てみると、20年産以降、その割合が高くなってきていることが分かります(図9、10)。牧草サイレージ傾向でも示しましたが、きちんとした乳酸発酵がされていないサイレージが増えてきているのかもしれません。次年以降も原料草の品質ももちろん重要ですが、調製時の踏圧や早期密封についても注意を払うようお願いします。
●各地区の傾向
道内全体の傾向は前記したようになりましたが、各地区での傾向も見てみましょう。おおよその地区で全道の傾向と一致しますが、少し異なるのが根釧地区になります。他の地区に比べ水分も高く、他の地区よりもCP、繊維、粗脂肪が高い傾向にあります。そのため、NFCは低いのですが、粗脂肪が高い分でTDNが他の地区と変わらない状況にあります(表3)。
発酵品質についても同様に全道の傾向と一致して、各地区でも有機酸の生成量が少ないようです。
3.地区別トウモロコシサイレージの均値 pH、水分以外は乾物%

pH

水分

CP

ADF

OCW

Ob

NFC

粗脂肪

テ゛ンフ゜ン

カリウム

TDN

総点数

*道央

3.83

70.7

7.86

23.5

42.8

38.1

42.8

2.36

26.2

0.99

70.9

147

道南

3.92

71.5

7.81

23.2

42.8

38.1

42.8

2.32

25.8

0.97

70.7

39

天北

3.97

72.7

8.15

23.9

43.9

39.1

41.7

2.33

24.9

0.97

70.5

12

十勝

3.97

72.0

8.10

24.3

43.9

38.9

41.5

2.39

24.7

1.10

70.6

58

根釧

3.85

73.7

8.75

25.7

45.6

40.2

38.6

2.76

23.5

1.13

70.5

46

北見

3.90

72.6

8.16

24.9

44.3

39.2

41.1

2.40

24.2

1.06

70.6

46

*道央は札幌、苫小牧、旭川

4.地区別トウモロコシサイレージの発酵品質 現物%

pH

水分

総酸

乳酸

酢酸

酪酸

VBN比

V-Score

総点数

道央

3.83

70.7

1.56

1.19

0.34

0.01

5.97

94.7

144

道南

3.92

71.5

1.35

1.00

0.33

0.01

5.90

94.7

39

天北

3.97

72.7

1.31

0.91

0.36

0.02

5.43

94.3

12

十勝

3.97

72.0

1.53

1.09

0.38

0.04

5.59

91.7

41

根釧

3.85

73.7

1.76

1.30

0.43

0.02

7.71

89.4

43

北見

3.90

72.6

1.63

1.23

0.37

0.01

6.83

92.6

44

*道央は札幌、苫小牧、旭川