標記の内容について11月下旬までの結果をまとめました。日々の仕事等に役立てて頂ければと思います。19年産1番草については分析結果より考察すると下記のようなポイントがありそうです。 |
○ 粗蛋白質は非常に低い(昨年より低い) ○ OCW、ADFが非常に高い傾向 ○ テタニー比 の高いものが多い |
○乾草(1番)の傾向 |
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19年産チモシー主体混播草地の1番乾草の平均値(表1)を見ると,昨年18年産の粗蛋白質レベルよ りも低い傾向が出ております。反対にOCW,ADFは最近5ヵ年で最も高い傾向となっています。 これらを詳細に見ていくと、粗蛋白質の分布は18年産と同様には6~8%までに4割強が集中しますが,19年産は6%を下回るものが18年産よりも多く見られます(図1)。 一方,OCW,ADFで高い傾向が見られますが,繊維の消化性を見ていくと19年産のOb/OCW%は18年産平均値に比べ若干低い傾向が見られたものの,その分布を見ていくと92~94%に集中しており,印象としては18年産より消化性は良くないかもしれません(図2)。 |
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17年産,18年産とテタニー比の高い乾草が多く見られました。19年産についてはその傾向が若干弱まりましたが,テタニー比が3.0を超える様な高い乾草も全体の15%程度を占めていますので,引続き注意してください(図3)。各ミネラルについて見ていくと(図4~6),カリウムは17,18年産よりも低くなっていることが分かります。カルシウムでは0.2%を下回るものが少なくなり全体的に底上げされた形です。この2点がテタニー比が17,18年産より改善された点かと思います。しかし,マグネシウムでは18年産と同様に0.2%以下の割合が高くなっており,例年より低い傾向が顕著です。マグネシウムはカリウム,カルシウムに比べ施肥等ではどこか後回しにされてしまうところがありますが,ミネラルバランス(テタニー比)を整えていく点でも重要なファクターとなりますので肥培管理でも気に留めておいてください。 |
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○牧草サイレージ(細切)の傾向 |
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19年産牧草サイレージは例年より若干水分が低い傾向があるようです(表2)。乾草同様に粗蛋白質がここ5ヵ年で最も低い結果となっており,例年,粗蛋白質は12%以下のものが全体の30~40%程度を占めますが,18,19年産はその割合が多く,特に19年産は56.7%にもなります(図7)。 19年産のOCW,ADFも18年産と同様に非常に高くなっており,OCW中のObの占める割合も高いことが分かります(図8~10)。リグニン含量は18年産よりは若干低いようですので,18年産より繊維消化性は多少改善されているかも知れません(図11)。 |
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牧草サイレージもこの3年間テタニー比が高い傾向が見られ、19年産も平均値では変わらない結果となっています。19年産は17,18年産に比べ分布のピークが低い方向へ移ってきています(図12)。しかし,にも拘らず平均値では17,18年産と変わらないということは,極端に高いものが若干ながらも増えてきているということです。カリウムは3.5%を超えるようなものは17年産よりも少ないですが,18年産に比べ若干高い傾向にあるようです(図13)。カルシウムは過去2ヵ年に比べ若干高くなってきておりますが(図14),16年産以前のレベルまではきておりません。また19年産のマグネシウムは18年産同様に低い水準です(図15)。 |
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○ラップサイレージの傾向 |
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ラップサイレージの傾向も乾草,牧草サイレージ(細切)と同様に粗蛋白質が低く,OCW、ADFが高く18年産と同様の傾向にあります(表3,図16,17)。19年産もOb/OCW%やリグニンが高く,繊維の消化性が悪い傾向がありますが,18年産よりは若干低いため繊維消化性は多少改善されているかも知れません(図18,19)。 |
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テタニー比は平均値では2.0を下回りましたが,分布はこれまで高かった17年産と18年産の中間にあり高い傾向にあります(図20)。カルシウムは0.4~0.5%のものが17,18年産より多く分布しており改善傾向が見られます(図20)。しかし,マグネシウムでは低い傾向が顕著です(図23)。 |
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●まとめ 19年産の粗飼料は粗蛋白質が低く,ADF,OCWといった繊維が非常に高い傾向にあります。牧草サイレージ,ラップサイレージの繊維消化性はObの割合が多く消化性が悪いことが特徴ですが,18年産よりも若干良いようです。乾草ではOb/OCW%の平均値が18年産を下回りましたが,Ob/OCW%の高いものの分布が多く印象としては18年産よりも若干悪いかもしれません。 17,18年産と同様にテタニー比の高いものが多くなってきています。17~19年産を通じて、特にマグネシウムが低い傾向が強く出ています。マグネシウムは肥培管理の中でも窒素,リン,カリウム,石灰の次になり後回しにされ,なかなか充分に補給できない場合があります。そのため、給与時のミネラルバランス等に気を配るだけでなく,自給飼料を生産する圃場の土壌へのマグネシウムの補給にも気を配る必要があるかもしれません。 このような傾向も全体でのことです。個々の粗飼料は様々です。まずはその粗飼料の中身を把握するためにも、粗飼料分析を通じて確認することをお奨めします。 |