平成20年産道内粗飼料の傾向(速報)

平成20年産道内粗飼料の傾向(速報)

 6月~7月にかけて収集した青草の結果をまとめました。青草の結果となりますが,今秋開封されるサイレージ成分の予測などに役立てて頂ければと思います。20年産1番草については分析結果より下記のようなポイントが推察されますが,地域で違う傾向も見られておりますので注意が必要です。

     ○    粗蛋白質は昨年と同等か更に低い傾向にある
     ○    ADF,OCWは昨年より若干低い傾向にあるものの,
        一部地域では昨年と同等で高い傾向にある
     ○    Ob/OCW,リグニンが昨年より低く繊維の消化性は改善傾向 

 各地区で収集したサンプル点数に違いがありますが,地域ごとに分けてまとめてみました。下記表は刈取日などに関係なく取りまとめた平均値です。

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 昨年の青草と比較すると,ここ2年続いてきた低蛋白傾向は今年も同程度もしくは更に低くなる可能性があります。
 一方,ADF,OCWといった繊維もここ2年高い傾向が続いておりましたが,昨年と同程度もしくは若干低い傾向になりそうです。しかし,根釧や十勝地区のOb/OCWやリグニンは昨年に比べ低い傾向が見られ,繊維の消化性は改善傾向にあるようです。

●直近の今年の粗飼料の傾向(表2)
 表2.は7月以降によせられた20年産乾草83点,ラップサイレージ56点および細切サイレージ67点の平均値を過去4ヵ年平均値と比較した結果です。乾草,ラップサイレージともに粗蛋白質が昨年,一昨年と同等か更に低い傾向にあります。
 繊維を見てみると,乾草では18,19年に比べADF,OCWともに低くなっており,ラップサイレージ,細切サイレージでもADFは昨年より低くなっています。しかし,16,17年と比較すると決して繊維含量としては低くなく,通常より繊維が高い傾向であることは変わらないようです。 

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 各地域の傾向について取りまとめてみました。今年は地域で若干違う傾向も見られますので,全体の傾向だけに捉われないようにして下さい。

●根釧地区の傾向
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 根釧地区の粗蛋白質の傾向は,平均値と分布を見ても昨年と大きな差は見られません(表3,図1)。 しかし,ADF,OCWといった繊維の項目について見ていくと,昨年に比べて刈取日が遅くなっても繊維の含量が低く,全体での平均値でも低いことが分かります(表3)。その消化性も見ていくと,消化性の低いObの割合も昨年より低い傾向にあり,リグニン含量でもその傾向が分かります。ADFの分布を見ても昨年に比べ低い方に移っていることが分かります(図2)。
 そのため,昨年同様に粗蛋白質は低い傾向にあります。しかし,繊維含量は昨年よりも低く内容も改善されそうですが,直近の粗飼料の傾向を見ても繊維含量は低い傾向ではないようです(表2)。

平成
 図1.根釧地区の粗蛋白質
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 図2.根釧地区のADF

●道央地区の傾向
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 札幌,旭川,苫小牧地区のサンプルをまとめてみました。
 道央地区では粗蛋白質は昨年よりも平均値で若干低い傾向にあるようですが(表4),その分布を見てみるとその傾向がはっきりしていることが分かります(図3)。
 根釧地区では昨年より繊維が低い傾向にありましたが,道央地区では平均値での差は小さく(表4),その分布でも差ははっきりしません(図4)。Obの割合やリグニン含量でも大きな差はなく繊維消化性についても差が見られません。

 そのため,道央地区は昨年よりも粗蛋白質が更に低い傾向にあり,繊維含量も昨年同様に高い傾向にありそうです。

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 図3.道央地区の粗蛋白質
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 図4.道央地区のADF

 ●十勝の傾向
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 南十勝が主体になるかと思います。また収集した時期が昨年と若干異なっていることを前置きしておきます。
 粗蛋白質の傾向は平均値ではその差は小さいものの(表5),その分布からは,昨年よりも低い傾向にあるようです(図5)。
 繊維の傾向はADF,OCWともに平均値は昨年よりも低い傾向にあり(表5),ADFの分布を見ても明らかです(図6)。また繊維の消化性についてもObの割合,リグニン含量からも昨年よりは改善されそうです(表5)。

 そのため,十勝でも粗蛋白質は昨年同様に低く,その傾向は昨年より強くなるかもしれません。繊維含量は,根釧地区と同様に,昨年よりも低く内容も改善されそうですが,例年よりは高い傾向にはありそうです。

20粗飼料速報図5.gif
 図5.十勝地区の粗蛋白質
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 図6.十勝地区のADF

●まとめ
 これまでの内容から20年産の乾草やこれから開封されるサイレージなどは,全体的に粗蛋白質が低い傾向にあり,道央や十勝地区では昨年よりもその傾向が強くなる可能性があります。
 一方,繊維は18,19年産粗飼料が非常に高い傾向にありました。20年産は根釧,十勝地区でここ2ヵ年より繊維含量は若干低く,消化性も改善傾向が見られそうです。しかし,直近の粗飼料データを見ても例年より決して繊維含量が低い傾向ではないようです。道央地区については引き続き高い傾向になりそうです。

 今年については春先の低温,旱魃傾向があり,出穂時期も遅れた地区もあったかと思います。そのため例年の収穫適期に作業をした場合,例年の収量を確保できないケースがあったのではないかと思います。一方,収量を確保するために作業を遅らせた場合には刈遅れ気味になったかもしれません。今回は青草からの傾向把握ですので,今秋開封されるサイレージ成分とはなりませんが,情報として利用していただければと考えます。